
(1)適用範囲の拡大
本基準は、大型化に対応することが目的の一つであった。暫定基準の本来の適用範囲からすればその目的は達しているが、建造実績は50mを超えており、さらに100mの高速船の建造も検討されている。諸外国では既に多くの大型船が就航していることから、わが国でもこれらの船舶にも対応可能な基準とする必要がある。
本基準は、理論的にフルード則が成り立つ荷重設定法に拠っていることを考えると、単胴型高速船として機能することが可能な範囲までの適用が考えられる。ここでは、従来の基準と同様の考え方で、実績を重視して拡張範囲を限定した。今後、水槽実験あるいは実績船の様子を見ながら適用範囲を拡張することを検討する必要がある。
(2)アルミ合金材
本基準で船体構造材料として使用可能なアルミ合金材を規定した。その中で、海水と直接接する可能性のある場所については、材料の使用制限をした。その例が、6N01材である。6N01材については、その加工性が優れていることから、利用範囲の拡大のための研究が行われている。これまでのところ、材料中のCuの含有量が現在のJIS規格値(0.35%以下)では、耐海水性に問題があり、その含有量をO.1%未満(Cu free)にすれば耐海水性が改善されることが認められたと報告されている。
Cu freeの6NO1合金については、漁船で10年程度の実績があり、特に問題はないといわれている。
これについては、他の機関で検討が計画されていることから、今後その検討状況を見ながら、使用範囲の拡張を考える必要がある。
(3)応答のモニタリング
船体の安全性は、運航条件を遵守して保たれる。従って、本来、設計条件に運航条件が考慮されて設計されていることを考えると、運航による安全確保が重要になる。
NVの1993年版の高速船規則では、加速度計の設置を要求していることを考えると、わが国においても今後の課題として検討していく必要がある。高速船の性能を発揮するには軽量化が重要なパラメタであり、就航海域の波浪、船体固有の運動応答を基に荷重を設定することが合理的である。直接計算により設計されるような船舶で
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